無知から始める読書習慣

読んだ本の感想と日々の変化記録

『透明人間になる方法 スーパーテクノロジーに挑む』感想 

白石拓著の『透明人間になる方法』という本を読んでみました。

タイトルのまま「透明人間になる方法」がずらずらと書かれているわけではなく、テクノロジーがどこまで進んでいてどんなことができるのか、できるようになるのかといったことが書かれています。

 

透明マントから始まり、エアロトレイン、サイコキネシス、脳リーディング、宇宙太陽光発電所、リモコン昆虫、自律走行車、惑星間インターネット、長寿の薬、人工聴覚・人工視覚、カプセル内視鏡、宇宙帆船、魚型ロボット、量子暗号など。

 

この本が発売されたのが2012年なので、もう8年ほど経っていますが、テクノロジーに疎い私にとっては知らない事だらけで、どの章も新鮮でした。

 

 

この本を読みながら、どれくらい実現されているのかが気になり、逐一動画検索などをしてみましたが、本当に自分が知らないところで色々と開発されているんだ実感。

 

透明マントの章ではハリーポッターに出てくる透明マントの話が出てきますが、当時『魔法』だと思っていたものが今現在ではテクノロジーの力によってどれも現実のものになりつつあるものだということを感じました。

透明マントについては「光操作技術」と「メタマテリアル」がキーワードで、世界中の科学者たちがこぞって研究に没頭しているのだそう。

 

YouTubeで検索してみたら、透明マントを使ってる人が結構いましたが、まだまだ「透明になって存在を消す」のには遠い感じかなと思います。

実際にマントで体を覆うと、姿が消えていたので、遠くはない未来にはハリーポッター並みに存在感を消すことのできるマントができているのかもしれません。

 

 

サイコキネシス(あるいはテレキネシス)とは、意思の力だけで物体を動かしたり、変形させたりする能力や現象のこと。

いわゆる超能力の一種で「念力」「念動力」などと訳される。

 

 SFの世界ではよくある話ですが、現実世界でもサイコキネシスが実現化するとのこと。それがBMI(ブレインマシンインターフェース)です。

脳からの指令をそのまま機械に伝えて動かす。

これは最近テレビや本などでも見聞きすることが多いので、読みやすい部分ではありました。

体の不自由な人が、脳で指令を出すだけで機械が反応してくれる。

頭の中でイメージをして念じるというということですが、それには訓練が必要とのこと。集中力が必要で疲労を伴うようですが、もし念じるだけでものを動かしたりできるとしたらどんな世界になるんだろうと想像すると面白いです。

 

 

最近は何かと環境問題が話題ですが、この本では太陽光発電についても書かれていて、なんとそれが宇宙に太陽光発電所をつくり、地上に送電するとのこと。

普段見聞きしている情報から飛躍しすぎていて理解するのが難しかった。

いずれにせよ、今では色々と条件のある(変換効率、季節、天候など)この太陽光発電の開発が進めば、今ある電力の問題が解決されそうです。

 

 

 最後の章では『人工冬眠』について語られていますが、何気に一番興味深かったかもしれません。リスやクマなど、冬になると冬眠を始めて体力消耗するのを抑え、えさのない冬をやりすごす。

 

この冬眠を人間にも導入できないかといったことが以前から研究されているのだそうです。人工冬眠できるようになると、老化が抑えられる。

タイムスリップや惑星間旅行を考えている者にとってはとても画期的な話なのです。

片道数年かかるその旅には膨大な酸素や食料や水が必要になりますが、冬眠して過ごすことができればかなり節約できるということです。

 

人間が冬眠できるのかどうかの一つの例として、2006年に山で遭難してから23日後に助かったという男性の話が出てきたのですが、食べ物や飲み物もなく、気温が低い中でどう考えても死んでいておかしくない状況で助かったという話を説明するには「冬眠をしていた」というのが説明がつくらしい。その後後遺症もなく退院したのだそう。

 

冬眠をする動物に、冬眠たんぱく質というものがあることがわかったのだそうですが、生命というものは驚く程不可思議な能力をもっているものだなと感じたと同時に、人間の考えていることでは到底及ばないようなことはまだまだ存在するんだなとも思いました。

 

人工冬眠繋がりで、『人体冷蔵保存』の話も出てきましたが、検索してみるとどうやらアメリカでは死亡した体を冷凍保存して未来で復活させるというビジネスがすでに存在していることがわかりました。一度死んだのに未来で生き返るのかどうかは謎ですが、可能性はゼロではないのかもしれない。

 

 

テクノロジーには疎かったのですが、この本を読んで世界のテクノロジーはどういった方向に向かっているのかを俯瞰できるようになったと思います。

まだこの本に書いてあることはほんの一部分だと思うので、これからもテクノロジーについて情報収集していきます。

 

 

 

 

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』 感想

お金2.0を読んでみました。

 

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

 

 

 

普段から経済に関してそんなに情報収集していない私にとっては濃い内容で、読み終わるのに五日ほどかかりました。

 

お金のことをよく考えずにこれまでの人生を過ごしてきてしまったのですが、この本を読んで、お金の過去から未来がどうなっていくのかというところまで理解できたような気がします。

 

kindleで読んだので、本の分厚さがわからないのですが、相当の分厚さがあるんじゃないか?と思ってしまうほど内容が幅広かったです。

 

 

この本の中では主に『価値経済』評価経済という現在もうすでに始まっている新しい経済について語られています。

格差がどんどん広がっていく中で、新しいフィールドの経済圏が幅広くできていき、人は自分が生きやすい経済の中で生きて行くことができるよになるとのこと。

 

 

資本主義に疑問を持っていたのですが、資本主義になぜ違和感を感じるのか?ということまで詳しく書かれていて納得出来ました。

資本主義というものは人間が自然の流れで発生したものであり、完全なものでもないということ。

 

お金に苦労し続けている人にとって資本主義というもの憎きものになりがちですが、まずは理解する必要がある。

 

 

こういったお金系の本を読んでいて思う事は、やっぱり成功している人、お金をたくさん持っている人というのは、お金と向き合うようになる時期が早いですね。

 

この本の著者は小学校時代にはお金を持っている家と持っていない家で不平等を感じ、そして「お金」「資本主義」とはなんなのか?ということを考えていくようになったとのことです。

 

私も世の中の不平等は感じてはいたものの30歳手前になるまではお金がなんなのかなどとは考えもせず、企業の宣伝などはそのまま鵜呑みにし無駄に消費、ストレス発散を繰り返してきました。

 

お金は汚い物という考えもどこで植え付けられたのか私の中にあり、そんな考え方がお金を大事に扱わない事につながっていたのかもしれません。

今考えると、信じられないくらいに無駄にお金を使っていました。

 

 

この本の中で税金のことは出てきませんでしたが、ビットコインなどの仮想通貨、トークンエコノミー、ポイントなどで国が発行している通貨を介さなくてもよくなるということですが、税金とかどうなるんだろう、大変そうだなと思いました。

 

現時点で、支払い方法なども色々とありすぎて、選択肢があるのはいいですがややこしいなと思っています。

 

 

今の経済の仕組みからして、暴利をむさぼっている人を止めたところで、下々の民にお金がまわってくるわけではないということがわかりました。

 

今に不満を感じている人は、資本主義に抗うのではなく、お金に依存しなくても生きていけるようになることと、別の経済圏で生きて行くことを考えなければいけないのかもしれません。

 

 

テクノロジーベーシックインカムについても書かれていて、今までの概念がこれから徐々に書き変わっていくことを想像すると、世界はいい方向に進んでいるんだなと確信できるほどで、読み終わったあとには世の中の見え方も変わりました。

 

ミレニアル世代(日本でよく言われるゆとり世代のこと)は馴染むのが早いが、既存の資本主義の中にどっぷり浸かってきた人には理解が難しいのではないかと書かれています。

世代間のギャップが面倒くさいところです。

 

私もミレニアル世代なので、この本の内容は違和感なくのみ込めたのですが、唯一理解出来なかったことは、自分の時間をお金に換算して売ったり買ったりをするというところです。

 

世の中には時間をすごく大切にしている人がいるので、そういったサービスを使いたいという人がいてもおかしくはないとは思うのですが、世の中全体がそうなってしまったらいよいよ終わりだなという気もしました。

結局は資本経済の延長でしかないサービスのように感じられました。

 

 

結果的にこの本の内容をまとめると、

「思いきり楽しめることをやらないと逆に損をする世の中になっていく」

ということで、今までのように誰かの言うことを聞き、会社に依存しやりたいことを我慢していることが善だった時代から、自分と対話し、幻想を現実に変えていける者が勝ち残っていく時代へのパラダイムシフトが起きている最中だということです。

 

 

できるなら資本主義経済から降りたいと思っていたので、その資本主義について理解できたことと、資本主義以外の経済での生き方を知る入り口になって良かったです。

 

今後もお金のことについてはまだまだ色んな角度から調べていきたいと思います。

 

 

 

読書感想『超筋トレが最強のソリューションである』久保孝史

プライムリーディングに気になるタイトルの本があったので読んでみました。

 

超 筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超・科学的な理由

超 筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超・科学的な理由

 

 

私は女子でありますが、このゴツイ表紙の本を読もうと思った理由は、要約を読んでみた時に共感できることがあったことと、純粋に面白そうだったからです。

 

実際に読んでみると第一章から【死にたくなったら筋肉を殺そう】と、インパクトのある題が。よく読んでみると筋トレをすると「死にてえ」から「殺すぞ」に変わっているとのこと。これは吹き出しそうになりました。

 

しかし作者はふざけて言っているのはでなく、あくまでも本気で言っているのです。

私も鍛えているわけではないのですが、人生の節目節目で猛烈に筋トレをしたくなる時というのがあります。それは決まって何かが動き出す時です。

 

不思議と激しい筋トレを続けた後というのは物事が好転していたりすることがあります。

なので、この本を読んでみたいと思ったのは少し思い当たる節があったからで、【筋肉が人生を変える科学的な理由】とはどんなことが書かれているかが気になったからなのです。

 

 

読んでいるとちょっと大げさなぐらいに筋肉を持ち上げているなとは思うのですが、と笑えるところがあり、なんとなく筋トレやってみようかなという気にはなってきます。

 

ところどころで筋トレによって人生の困難を乗り越えた方々のストーリーが漫画として描かれているので、活字が苦手な人でもとても読みやすくなっているなと思いました。

 

 

女性が読んでもためになるのかという問題は、男女変わらず気になったのならば読んで面白いと思います。

ただ個人的に感じたのは、著者が「女はプリケツ」という言葉を度々出してきていましたが、そこが少し不快感を感じました(笑)きっと相当プリケツが好きなのでしょう!

 

 

とは言っても、漫画の登場人物では女性も何人か出てきて、ケツ筋ばかり鍛えているわけではないので読んでいてためになると思います。

特に鬱っぽい人や活力がない人には読んでみて損はない本だと思います。

 

 

読書感想『大どんでん返し創作法:面白い物語を作るには ストーリーデザインの方法論』

いつかは物語を書いてみたいと思っていた時期もありましたが、ブログを始めてみて、まともな文章すら書けないという事に気がつき早3年・・・。

小説を書くなど無謀な事だと自覚してすっかり物語を書くということは諦めていました。

 

最近面白い本はないかとkindleのストアを見ていたら気になる本をみつけたので読んでみることにしました。

どうやって物語を面白く仕上げるかといった内容の本です。

 

さぞかし難しい本なのだろうと思っていたのですが、『ぴこ蔵』『ブンコ』というキャラクターのやりとりで文章が成り立っていてとても読みやすいです。

 

 

主に【大どんでん返しをいかにして作るか】というところに重点が置かれていて、どんでん返しのつくり方を丁寧に細かく教えてくれています。

 

読んでみて、やっぱり何の考えも無しに書き始めるよりも、構成を考えてから取り組むという事が大事なのだとわかりました。

これはブログにも言えることなのですが、私の場合は未だに思ったままに書いてしまっています。

 

この本には色んなパターンのどんでん返しが書かれているので、実際に自分で物語を書いてみるのは難しかったとしても、これから小説を読む時、ドラマや映画を観る時に、違う視点からも見られるようになると思います。

 

 

人生はうまくいかないからこそ面白いという言葉は聞いたことがあると思いますが、まさに物語を面白くするのが、主人公に待ち受ける困難と障害です。

 

今まで深く考えずに書いてあるまま、見るままに本の内容や映画の内容を受け取っていましたが、それも全部作者が意図的に考えたものだとわかると、なんだか世の中の見え方が違ってくるようにも思えてきます。

 

現実にある困難は自らが作り出しているモノなんじゃないかとすら思えてきます。

物語づくりの奥深さが知れて良かったです。

そして、このどんでん返しのパターンや型を越えた物語りを作り出している人は本当に凄いなとも思いました。

 

自分には物語を書くのは無理だという気持ちは変わりませんでしたが、これから本を読む時や映画を観る時に今までとは違った楽しみ方ができそうです。

 

 

大どんでん返し創作法: 面白い物語を作るには ストーリーデザインの方法論 (PIKOZO文庫)

大どんでん返し創作法: 面白い物語を作るには ストーリーデザインの方法論 (PIKOZO文庫)

 

 

和辻哲郎『夢』読書感想

今回はタイトルが気になった和辻哲郎の『夢』を読んでみました。

 

 

以前『小寺巡礼』という本を読んでみたのですが、半分も読まずに断念。

私には理解が難しくて途中で読むのをやめてしまいました。

 

その本繋がりで『夢』という本を読みましたが、こちらの本は驚いたことに、すらすらと内容が入ってきて、すぐに読み終わることができました。

同じ著者なのに本によって読みづらいものと読みやすいものがあるとは驚きです。

 

 

冒頭「夢の話をするのはあまり気のきいたことではない」という文から始まります。

確かに夢という抽象的な物事を語るという事は、日常生活では気のきいたことではないかもしれません。

そして人によっては理解しがたくなるかもしれないというところも考えてのことなのかなと思いました。

あえてそのことについて文章にしたところがこの本の面白いところです。

 

 

三行読んだところですでに内容に引き込まれます。

その内容は【痴人夢を説く】という言葉は〝痴人が夢を説く〟という事ではなく、〝痴人に対して夢を説く〟というのがシナのことわざであったとのこと。

前者と後者ではまったく意味が違ってきます。

 

このことについて、著者なりの考えが書かれているのですが、深く考えさせられてしまいます。たぶん、このことわざは、人によって意味が違うのかもしれないと感じました。内容はいかにも哲学者だなという言葉や当時の言葉が次々に出てきて、昔の本っぽくて好きです。

 

 

『夢』といっても、寝たときに見る夢の事なのか、理想のことを言っているのかでも意味が違ってきます。そして昔の人は夢を神のお告げとして解釈していた。

色んな方面からの夢について語られていてとても面白いです。

 

 

本を読み終わった後に残っていたのは意外にも「寝る前に食べたものが夢に影響する」という内容でした。

著者がその夢を見た時は、日米関係が悪化していた時で、食べ過ぎた日の夜、なんと日米開戦を夢に見たのだという。

 

その夢の内容が詳しく書かれているのですが、その内容によると、この著者は開戦を前に東京が空襲により致命的な打撃を受けるという予知夢を見ていたことになります。

どうやらアメリカが恐ろしいものを発明していたということもその夢に出てきたようで、なぜ、そんな夢を見たのかについても著者なりに分析されていて面白いです。

 

 

その夢に出てきた景色は、関東大震災の時の記憶が蘇ったものではないかという。

そして「これでもう最後だ」と思った時に目が覚めたのだそう。

 

 

 

私も夢はよく覚えている方で予知夢なんかもたまに見たりするのですが、夢というのは過去に起こったことや、人から聞いた話や、テレビや映画で観た映像、なんでこんなものがといったものまで色んなものがごちゃ混ぜになったものが出てきます。

何度か死ぬ直前の夢も見たことがありますが、やっぱり直前で目が覚めるんですよね。

 

 

夢が現実になるとは言っても数あるうちの夢がたまたま的中したといってしまえば、確率の問題なのでそれまでなのですが、それでもこういった話を聞いていると夢とは何ぞやと、無意識、潜在意識など未知への好奇心がわいてきます。

 

 

戦争の夢の他にもう一つ語られていますが、いずれも私にとってはとても面白く、夢のトンチンカンさに笑えるところもあって楽しく読めました。

結末があるわけでもなく、夢についての明確な答えがあるわけでもないので、夢の話にはまったく興味がない人にとってはつまらない内容かもしれませんが、著者自身が冒頭から痴人夢を説くという話を使ったり、見た夢について「ケチ臭い夢をケチ臭いままに書いてみたのであるが」といっている辺りがなんとなく私は好きです。

 

 

普段目にしているものがどれだけ夢に影響を与えるのか・・・についても書かれていますが、夢に関してはその晩に食った鳥鍋が主な原因であろうという結論が興味深く、結局読み終わった後に私の記憶に残ったのはその部分だったのでした。

 

 

 

夢の話からの繋がりで、この時代の背景なども窺えて、この時代の人はこう考えるんだと思ったり、時代は変わっても人間の思考の癖は変わらないのだなと感じたり、夢意外にも知ることが沢山あって読んで良かったと思える本でした。

 

著者のように頭脳労働をする者が、肉体労働をする者から見るとのらりくらりと遊んでいるように思われるといった切実な悩みは、現代でも十分に通ずるところがあるなと思ったと同時に、未だに労働信仰が根強い日本だけど当時からそのように悩む人がいたと思うとなんだかホッとする気持ちも起こりました。

 

 

 

夢

 

 

和辻哲郎『夢』読書感想

今回はタイトルが気になった和辻哲郎の『夢』を読んでみました。

 

 

以前同じ著者の『小寺巡礼』という本を読んでみたのですが、半分も読まずに断念。

私には理解が難しくて途中で読むのをやめてしまいました。

 

その本繋がりで『夢』という本を読みましたが、こちらの本は驚いたことに、すらすらと内容が入ってきて、すぐに読み終わることができました。

同じ著者なのに本によって読みづらいものと読みやすいものがあるとは驚きです。

 

 

冒頭「夢の話をするのはあまり気のきいたことではない」という文から始まります。

確かに夢という抽象的な物事を語るという事は、日常生活では気のきいたことではないかもしれません。

そして人によっては理解しがたくなるかもしれないというところも考えてのことなのかなと思いました。

あえてそのことについて文章にしたところがこの本の面白いところです。

 

 

三行読んだところですでに内容に引き込まれます。

その内容は【痴人夢を説く】という言葉は〝痴人が夢を説く〟という事ではなく、〝痴人に対して夢を説く〟というのがシナのことわざであったとのこと。

前者と後者ではまったく意味が違ってきます。

 

このことについて、著者なりの考えが書かれているのですが、深く考えさせられてしまいます。たぶん、このことわざは、人によって意味が違うのかもしれないと感じました。内容はいかにも哲学者だなという言葉や当時の言葉が次々に出てきて、昔の本っぽくて好きです。

 

 

『夢』といっても、寝たときに見る夢の事なのか、理想のことを言っているのかでも意味が違ってきます。そして昔の人は夢を神のお告げとして解釈していた。

色んな方面からの夢について語られていてとても面白いです。

 

 

本を読み終わった後に残っていたのは意外にも「寝る前に食べたものが夢に影響する」という内容でした。

著者がその夢を見た時は、日米関係が悪化していた時で、食べ過ぎた日の夜、なんと日米開戦を夢に見たのだという。

 

その夢の内容が詳しく書かれているのですが、その内容によると、この著者は開戦を前に東京が空襲により致命的な打撃を受けるという予知夢を見ていたことになります。

どうやらアメリカが恐ろしいものを発明していたということもその夢に出てきたようで、なぜ、そんな夢を見たのかについても著者なりに分析されていて面白いです。

 

 

その夢に出てきた景色は、関東大震災の時の記憶が蘇ったものではないかという。

そして「これでもう最後だ」と思った時に目が覚めたのだそう。

 

 

 

私も夢はよく覚えている方で予知夢なんかもたまに見たりするのですが、夢というのは過去に起こったことや、人から聞いた話や、テレビや映画で観た映像、なんでこんなものがといったものまで色んなものがごちゃ混ぜになったものが出てきます。

何度か死ぬ直前の夢も見たことがありますが、やっぱり直前で目が覚めるんですよね。

 

 

夢が現実になるとは言っても数あるうちの夢がたまたま的中したといってしまえば、確率の問題なのでそれまでなのですが、それでもこういった話を聞いていると夢とは何ぞやと、無意識、潜在意識など未知への好奇心がわいてきます。

 

 

戦争の夢の他にもう一つ語られていますが、いずれも私にとってはとても面白く、夢のトンチンカンさに笑えるところもあって楽しく読めました。

結末があるわけでもなく、夢についての明確な答えがあるわけでもないので、夢の話にはまったく興味がない人にとってはつまらない内容かもしれませんが、著者自身が冒頭から痴人夢を説くという話を使ったり、見た夢について「ケチ臭い夢をケチ臭いままに書いてみたのであるが」といっている辺りがなんとなくだけれども奥ゆかしい部分があって著者との距離が縮まる部分だと感じました。

 

 

普段目にしているものがどれだけ夢に影響を与えるのか・・・についても書かれていますが、夢に関してはその晩に食った鳥鍋が主な原因であろうという結論が興味深く、結局読み終わった後に私の記憶に残ったのはその部分だったのでした。

 

 

 

夢の話からの繋がりで、この時代の背景なども窺えて、この時代の人はこう考えるんだと思ったり、時代は変わっても人間の思考の癖は変わらないのだなと感じたり、夢以外にも知ることが沢山あって読んで良かったと思える本でした。

 

著者のように頭脳労働をする者が、肉体労働をする者から見るとのらりくらりと遊んでいるように思われるといった切実な悩みは、現代でも十分に通ずるところがあるなと思ったと同時に、未だに労働信仰が根強い日本だけど当時からそのように悩む人がいたと思うとなんだかホッとする気持ちも起こりました。

 

 

 

夢

 

 

(青空文庫)小川未明の〝東京の羽根〟読んでみました

 

たまに小説でも読んでみたいと思い、kindleに溜め込んであった本の中から一冊選んで読んでみました。

青空文庫なので無料で読めるところがありがたいです。

 

東京の羽根

東京の羽根

 

 

なんとなくタイトルが気になりダウンロードしておいた本です。

私は地方出身なので、東京というと夢の大都会といった幼い頃の印象がまだ残っているのですが、一体どんな内容なのだろうと思い読んでみると、意外にもとてもさっぱりしていて読みやすかったです。普段本を読んでいる人なら一瞬で読み終わります。

 

内容はとても可愛らしく、『東京の羽根』とはなんとお正月などによく遊んだあの羽根つきの羽根のことでした。


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もっと抽象的な羽根をイメージしていたので意外でした。

そして主人公はなんとその羽根です。

 

東京で空を舞っていた羽根は、持ち主の打ち方が良くなかったために、横へそれてトラックに乗ってしまった。

羽根はそのままトラックに乗って旅をすることになります。

「別の羽根をもってくるからいいよ」という持ち主のセリフに切なさを感じます。

 

途中で現れたカラスに東京に連れて行ってくれませんかと頼むも、トラックの速さにはかなわず、カラスはあっという間に後ろになってしまいます。

 

 

トラックに乗って田舎まで来てしまった羽根は田舎の人間の持ち物となり、羽子板で空を舞いますが、今回は屋根の上へと落とされてしまう。

そんな羽根の元にカラスがやってきて羽根を口ばしで加えた。

 

羽根はカラスにもう一度「東京に連れて行って」と頼みますが、カラスは耳に入らなかったように、森の中へ飛んで行きます。

辿り着いたのは、カラスの巣でした。

 

東京で空を舞っていた時にはもっと高く飛んでみたいと思っていましたが、今、羽根の望みは叶ったけどあまりにも寂しい。

 

 

最後は

この後、羽根はどうなるでありましょうか?

といった疑問で締めくくられています。

 

願いが叶ったけれどもそこで虚しさがおそってくるところに共感を覚え、そして羽根の可愛らしさ感じる内容でした。

 

 

 

読み終わってから、作者の〝小川未明(おがわみめい)〟というかたを調べてみたところ、なんと男性の作者でした。


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文章の繊細さやストーリーの雰囲気などからきっと昭和の時代の女性が書いたのだろうと思っていただけに驚きでした。