群集心理や共同幻想というものを知りたくてAmazonを眺めていたところこちらの本を発見。
チャールズマッケイ(英 1814~1889)著 水野宣広訳
原書はなんと26巻からなり、そのなかから抜粋した1冊になるとのこと。
あとがきから引用すると、英語版は米国では前世紀半ばには公立図書館などにスタンダードな作品として収められ一般教養の書として広く愛読されたとあります。
その後しばらく絶版になったが、近年、政治経済における世相を反映してか再出版の動きがあり、現在数社により再版復刻されるに至っているとのことです。
内容は主に中世ヨーロッパ人の群衆がどのようにして熱狂が伝播し狂気の行動にいたるのか。
その詳細が書かれています。
ここ数年新型コロナが流行り、さらに以前から同調圧力というものが私は不思議でならなかったので、現代に重ね合わせたりしながら読んでいた。
冒頭シラーの見解として
「個人としては、相応の分別・理性がある者でも、群集の一員になると、直ちに思考を停止する。」
という文があるのですが、これはずっしりと響くものがあります。
まさにその通りだと思う。
私は一人でいるのが好きなのですが、仕方なく集団でいなきゃいけなくなった時は、以前の自分(考え)はどこにいったのだろう?とよく思うことがあります。
序盤は1600年代に起こったチューリップバブルについて書かれています。
記録に残された最初の投機バブルと呼ばれている。
誰がどのような経緯で何をしてチューリップの価値が爆上がりしていくのかが書かれていて、まるでその光景を見ているかのような気持ちで読んでいた。
十字軍の部分はかなり長く書かれてあり、結構読むのに苦戦した。
というのも、中世ヨーロッパ史は血みどろまみれでややこしいイメージがずっとあったので、今まであまり興味をもつことがありませんでした。
これを機会に読んでみたら、これが凄く面白かったのです。
さすがに第6回十字軍とかまでいくとかなりうんざりしてきたのですが、それがどれほど狂気に満ちた執念のもとに行われていたのかが十分に理解できたと思います。
第一回十字軍がどのようにして数十万の狂気に満ちた群衆になっていくのかが細かく描写されています。
それから、【政治・宗教と髪】では、男性の間で長い髪が流行ったり短い髪型が流行ったり、髭も長かったり短かったりと、流行があったよう。
そしてそのことで争いが起こったり、政治や宗教的に禁止されたり解禁されたりする。
本のボリュームはたっぷりで、中世ヨーロッパが好きな人、詳しい人はかなり楽しめる本なんじゃないかと思う。
他には化け物屋敷の迷信や、イギリスでの流行り廃り、それから盗賊がしばしば英雄扱いされることなどについても書かれている。