無知から始める読書習慣

読んだ本の感想と日々の変化記録

〝目からウロコの中東史 51のテーマでイスラーム世界を読み解く!〟読書感想

 

中東の歴史について興味を持っていたので「難しそうだけど少しでも歴史を理解したい」と思い、今回はこちらの本を選んで読んでみました。

 

目次を読んでみたところ、中東の知識がほとんどない人でも読める感じだったので手に取りました。

 

まず大体の日本人が中東に対して「危険なところ」というイメージを持っているのではないかと思います。

 

私も中東と聞けば宗教やテロ、一夫多妻など少し暗いイメージのものが連想され、危険なところだという認識がありました。

そして謎も多い。

 

しかしなぜか神秘的なものを感じ、「実は自分が思っていることとは違うことがあるのでは」という思いがあり、今回は本を読んでみることにしました。

 

 

まえがきの一部には

本書は世の中に相当数いるだろう潜在的読者に良書を提供すべく企画されたものである。

 とあります。

潜在的読者とはまさしく私のことだなと思いました。

 

全部で51の項目からなり、最近のテロ事件や紛争からベール・断食・巡礼などの風俗習慣、さらには民族・宗派・言語などさまざまな方面に及んでいる。

とのことから、読んでみて本当に好奇心を刺激するテーマをもとに、さまざまなことに関して知ることができました。

 

 

まず最初に『入門編』として、〝日本人がよく感じる疑問〟について書かれています。

 

世界三大一神教(ユダヤ教キリスト教イスラーム)はそれぞれエルサレムを聖地としている。

なぜこの三大宗教はそれぞれエルサレム聖地として崇めるようになったのかが書かれていますが、当事者ではない日本人からするとやはり別世界の物語のように思えます。

 

 

そして中東諸国が〝アメリカ嫌い〟になる理由について。

社会的自由に憧れ、親米感情を抱く人もいるが、全体として見れば反米感情を抱く人の方が多いという。

アメリカを対象としたテロの一覧を見れば、一目瞭然です。

 

イスラーム世界の人がアメリカを嫌う一つの理由はアメリカの『親イスラエル政策』にあるといいます。

とにかくアメリカはイスラエル側に肩を入れるらしい。

 

分割案から始まり、軍事・経済上の援助を惜しまなかったおかげで、イスラエルは国家の消滅や財政破綻を免れ、軍事大国となった。

 

中東イスラーム国からすると面白いはずがないというわけであります。

 

そして、もう一つの理由がアメリカの価値観を異国の地に受け入れさせようという姿勢に抵抗を感じるということである。

これは中東に限らずどこでも起こりうる話だとは思いますが、特に中東は独自の歴史があることから受け入れがたいのかもしれません。

 

 

読んでいると、アメリカがいかに都合よく贔屓をしているのかがわかります。

このようなやり方を、この本では『二重基準外交』といっています。

 

 

アルカイダのようなテロ集団がなぜ出現するのか』については、元々はイスラーム復興運動(イスラーム本来の理念に基づく世直し運動・慈善活動)で、過激派はそこから枝分かれしたものだという。

 

ここでは「イスラーム原理主義」の呼び名でいっしょくたにしてしまっている欧米や日本のマスコミにも悪いイメージを植え付けてしまっているとして、批判されています。

 

 

このイスラーム復興運動がなぜ起こったのかというと、やはりここにも欧米の影響が絡んでくる模様。

本当に複雑で入り組んでいますが、それでもわかりやすく書かれてあると思います。

 

 

 

この本を読んで私はイスラームに対する印象が変わりました。

先入観から怖い宗教だと思っていたのですが、意外にも先進的であり、柔軟性もあると感じました。

身近に感じられる部分もありました。

 

そしてなぜイスラーム復興運動が盛んになったのか、その背景を知り、環境的なものから必然的な動きなのだと理解しました。

 

 

 その他

イスラーム女性はなぜベールをかぶるのか?

つい最近の話題である中東レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン氏について

アフガン内戦

タリバン政権とはなんなのか

なぜアフガニスタン武装組織の結成が相次いだのか

パレスチナ問題

ユダヤ人はなぜ迫害されたのか

エスはなぜ殺されたのか

イスラーム創始者ムハンマドとは何者なのか

など興味深いところが盛りだくさんで、一気に中東の知識がつきました。

 

 

 本の後半には、『一夫多妻は女性蔑視のあらわれか』といった章がありますが、一夫多妻制に嫌悪感を持っていた私は読んでみて少しだけ考えが変わりました。

男の色欲のためではなく、寡婦、孤児のための制度で、事実上は一夫一妻制を奨励している

とのことです。

ムハンマドの生い立ちから、孤児の支援などに手厚いことはわかったのですが、この弱者救済の考え方が一夫多妻に繋がってくるとは思いませんでした。

 

よく考えると、男一人で何人もの女と子供を養うというのはよほど器量のある男でないと大変だということが想像できます。

 

それをわざわざ制度化するのにはわけがあり、貧困救済のためだったということです。

日本の感覚でいうと、女好きがハーレムを作りたがるイメージがあり、よくないことと思いがちなのですが、イスラームの世界には自分が見ているものとは違う現実があるのかもしれないということを思いました。

 

ちなみに今現在のイスラーム諸国では実際に複数の妻を持つのは全体の一割にも満たないとのことです。

 

 

 それにしても、中東の建物は本当に綺麗で ハッと息をのむようなものばかりです。

いつか写真ではなく本物を自分の目で見てみたいものです。