無知から始める読書習慣

読んだ本の感想と日々の変化記録

『人工知能は資本主義を終焉させるか』斎藤元章/井上智洋 読書感想

 

資本主義について前々から疑問を持っていて、今後もずっと続いていくのかどうか?ということが気になり、Amazonで検索してみたところ、こちらの本が目についたので読んでみました。

 

サブタイトルが「経済的特異点と社会的特異点」ということで、読むと今後の世の中がどういう風に変化していくのかが見えてきます。

 

ちょうどこの本が読み終わった頃に著者の一人である斎藤元章さんがスーパーコンピューター開発の助成金をだまし取ったことと、脱税で逮捕されるというニュースが入ってきました。

 

 

本の内容が本当に素晴らしく、考えていることや見えている未来も素敵だなと思っただけにとても残念であります。

 

正直何が起こったのかはたぶん当事者にしかわからないと思いますが、お金に関する問題は曖昧なところがあるので、なんとも言えません。

 

 

しかし本の内容自体はとても良かったので、とてもおすすめです。

この人本当に5年も懲役に行ってしまっていいような人なのだろうか・・・。

というのが逮捕に対する私の感想です。

 

 

 

スーパーコンピューターの開発者(斎藤元章)と、経済学者(井上智洋)との会話形式の本となっています。

 

そもそもスパコンとか量子コンピューターとかそういった類のものは、どんなものなのかを私はよくわかっていなかったのですが、この本を読んでだいぶ知識を得ることができました。

 

簡単にいうと、人間が到底行うことのできない計算を瞬時にしてしまうことができるといったことですが、これが進化していくことにより、人間の生活は大きく変わっていくということです。

 

 

経済学者の井上智洋氏は

「2060年頃にはわれわれが普段やっているような仕事はほぼ人工知能に置き換わり、人間はほとんどやらなくて済むようになると予想している」と本の序盤で言っています。

 

 

人間が労働を行わずに済む未来が到来するためには、汎用人工知能(幅広いことができるAI)が増えなければならないのですが、それにはまずスーパーコンピューターがハードウェアとして存在しなければならないということです。

 

 

現在の経済の問題点が語られていますが、「デフレがなぜずっと続いているのか、不景気や格差がなぜ解消されないのか」ということがしっかりとわかる内容となっています。

 

この本の中で、井上氏は「軽減税率は導入しないほうがいい」といっているのですが、本が出版されたのは2017年。

2020年現在軽減税率は導入されてしまいました。

 

導入しない方がいい理由は、人々の行動が歪められることになり、税を逃れるために変な努力をする人が出てくるといったことです。

確かにややこしくてどうでもいいところで無駄に頭を使うので、変なシステムだなと私も思います。

 

ヘリコプターマネー

ヘリコプターマネー

  • 作者:井上 智洋
  • 発売日: 2016/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
AI時代の新・ベーシックインカム論 (光文社新書)

AI時代の新・ベーシックインカム論 (光文社新書)

  • 作者:井上智洋
  • 発売日: 2018/04/17
  • メディア: 新書
 

 こういったような本を出されていて、「軽減税率を導入するよりは低所得層にお金を直接給付したり高額所得者の累進課税率を上げたりするほうが政策としてはシンプル」と言っています。

 

 

本のお題の中に

『お金のない社会は実現可能か』

といった非常に興味深い章があります。

 

お金が原因で悲惨な思いをいている人が多い世の中、お金がなくなったらどれだけの人がしがらみから解放されるのだろうと、とても興味のある内容でした。

 

 

これに関してはもし可能にするとなれば、一家に一台小型の植物工場、3Dプリンタがあり、電力もそれぞれが自家発電にすることで可能になるといったことでした。

 

エネルギーのフリー化について書かれていますが、現実的には可能なんだなということがわかりました。

 

もし一家に一台の常温核融合」があればエネルギーの個産個消が実現するという。

これは小型化ができるうえに、地震の時にも安全で設備も簡単、デメリットがみあたらないということで世界中で研究されているそうです。

 

問題点は温暖化につながる可能性があるとのことですが、これも解決策があるとのことで詳しく書かれています。

 

 

斎藤氏はエネルギー問題は早々と解決し、衣食住もフリー化できると言っています。

 

 

現在は資本家、大企業がまとめて生産、供給を行っていますが、これを個々の家で賄えるようになることで初めてモノの値段がゼロに近づいてくるといったことになります。

 

個産個消、地産地消について詳しくかかれていますが、読んでみるとそれは将来的には不可能なことではなくなっているんだなということがわかります。

 

 

この本の中で斎藤氏が「お金をなくしたいと主張している理由」について語られているだけに、本当にお金のことで捕まってしまったのは残念です(;_:)

 

 

 

私自身、日本どころか世界中が拝金主義に侵されているということに最近になってようやく見えてきたので、この本に書いてある内容が本当に実現したらどんなに素晴らしいことなのかと希望を抱くことができました。

 

 

斎藤氏は「若者は物欲がなく社会貢献に生きがいを感じるようになってきている」ということを語っていますが、ここだけはちょっと違うかなと感じたところです。

若者といっても色々といますが、社会貢献が好きな人は今も昔も変わらなくいて、実際には現代は「使うお金がない」若者が多いだけなような気がします。

 

 

私自身、欲しい物はあるけれども、次々と買えるほどのお金がないので、あれこれと頭を使って「どうやったらお金をかけずに過ごせるか」を日々考えていますが、もし余るほどのお金があるのなら、もっと消費をしていると思います。

 

 

昔は結構「欲しいものがあれば稼いで買えばいい」という考えだったのですが、今現在無理して消耗することを考えたら「そもそも物欲をなくしてしまえば疲れることもないかな」と考えるようになってきました。

 

 

シェアリングエコノミーなどが登場し世の中全体でモノを所有しないという風潮も高まってきています。

「モノを消費しない」ということは資本主義にとっては大打撃となってきます。

ここが本のタイトルである「資本主義を終焉させるのか」ということとつながってきます。

 

しかし歴史上初めて人類はお金と労働から解放されると書かれてあることから、夢物語ではなく、どうやら実現可能だということが素人なりにもわかってきました。

 

とはいえ、生活するのに最低限必要な衣食住はフリーになるとしても、ぜいたく品などを買うにはまだお金がかかってくるということです。

それでも衣食住がフリーになるだけで世の中のどれだけの人が不幸を免れるのかということを考えると、未来はとても明るく見えますね。

 

こういった内容のものを読むと、共産主義の失敗が頭をよぎるかと思いますが、そのことについても書かれています。

 

 

 

 

 

パンデミックや宇宙に関する脅威などついても書かれていていますが、尚更お金に関する無駄な悩みなんてなくなったらいいのにと思うところです。

 

 2020年4月、今まさにパンデミックの脅威にさらされていますが、遺伝的多様性の重要さと突然変異というものがいかに種の保存に貢献してきたのかがわかりました。

 

今、特に日本は画一的という言葉が相応しく、個性というものが無視されがちに私は見えていますが、このパンデミックを機会にこの本に書いてあるような個の爆発が起きる世の中になればいいなと思います。

 

 

AIやVRはもうおなじみとなっていますが、少しなじみが薄く、まだ世の中に概念が広がっていないのがBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)ではないでしょうか。

 

これは人の脳とモノが繋がるということですが、今現在では結構なところまできているようですね。

例えば脳で念じれば電気を消したりつけたりとかができるようにもうなっているということです。

 

さらに簡単に人の考えていることをハッキングすることができるとあり、もう恐怖どころの話ではなくなった( ゚д゚)ポカーン

 

将来的にはBBI(ブレイン・ブレイン・インターフェース)というものが普及して、人と人の脳がダイレクトに繋がり、言葉などの媒介がなくても感覚を直に相手に伝えることが可能になってくるのだそうです。

すごすぎますよね(*_*)

例えば今、言葉で何かを伝えたいと思って話しても、相手にはその全部は伝わっていないということもありますよね。

 

相手がどれだけ痛い思いをしているのかということも、言葉だけだと十分に伝わっていないかもしれない。

ですが、人の脳と脳とが繋がることによって、その痛みや感覚がダイレクトに繋がるというのです。

 

こうなると色んな問題も出てきそうではありますが、それでも今よりももっといい世の中になっていそうです。

 

 

そして、終盤になってくるとかなり飛躍し、人間の体を構築するものは有機物ではなくても良くなってくるというところまでいきます。

不老も実現されることも書かれていますが、もし体が無機物(たとえばシリコンや金属)でもいいのならば、事故って死ぬということもなくなってくるということになりますよね。

 

最初はなんか信じられませんでしたが、私は割とそれはそれでありかもしれないなと思えました。

だとしたら空を飛んで事故にあって死ぬということや、山に入って野生動物に襲われて死ぬ、海に入ってサメに喰われて死ぬということもなくなってくるわけですよね。

 

そしてやはり今後キーとなってくるのは生命科学」「遺伝子操作」「遺伝子治療なんだなということが、本を読んで確信に変わりました。

 

たとえばがんの治療では抗がん剤を使いますが、これは効く人と効かない人がいる。

しかし遺伝子治療であれが、ピンポイントでその人に合った治療が受けられるので、がんで亡くなる人というのも格段と減ってくることになるわけですよね。

 

この遺伝子治療を発展させるにはやはりスーパーコンピュータがかかせなくなってくるということです。

 

 

まだ内容について書きたいことがありますが、延々と終わらなそうなので、最後に引用して終わります。

 

地産地消・個産個消の仕組みをベースにして、個人の個性や創造性・多様性が最大限に発揮されて、爆発するような社会を実現させたいと私は思っています。

 

個人が最終的にどこかで誰かに何かを頼っていたら、個人の尊厳を追求することも、個性と創造性を爆発させることもできない。

 

ということで『人工知能は資本主義を終焉させるか』の感想でした。

とても良い本で読んで良かったです。

今現在の世の中に(特に資本主義に対して)なじめない人に特に読んでほしい一冊です。