この本を見つけたときは本当にゾクゾクわくわくしました。
ここまで好奇心をそそられた本というものは、初めてのことかもしれません。
山に関する本を探していたところ、こちらの本をみつけました。
どうやら山怪3まで出ているらしいのですが、1はUnlimitedで読めるという事で、本当にありがたかったです。
今、夏になって読み終わったのですが、読み始めたのは冬に入った頃。
長距離バスでの移動が多く、流れる景色が山ばかりで日も短く、その道中に読んでいたので、これまた雰囲気がありとても良かったです。
読み終わっての感想を一言で書くと、
とても素晴らしい
です。
本来ならば語られずに消えてしまうような話をここまで集めて本として残してくれるという行為に純粋に感謝の念が湧いてきます。
大人になってから本を読んで奇妙な気持ちになったり、独特の世界観に浸ったりということは少なくなってきます。
しかし、なんでも初めての経験だった子供のころに戻れるような、そんな感覚がある。
内容は、著者がインタビューをして聞き込みをした、山で起きた怪異について書かれています。
ホラーとは違う、もっと身近な生々しさがある。
山という事でやはり狐や狸に化かされる話が多いですが、その他にも口で説明するのが難しいような怪談が話されています。
自分が若いころや幼い頃に経験した事とも重なるところがあって、懐かしくなったりもした。
例えば、4,5歳のころに私は父親に連れられて、兄弟と共に山にしいたけを取りに行ったんですけど、その時に木に黒いカッパがかかっていて、それを人の死体かなんかだと勘違いした私は怖すぎて泣き叫びながら山を走って下りたことがあるんですよね。
これと同じ経験をしたことがある人の話が載っていて、子供のころを思い出し、クスッと笑ってしまった。
それから、車のナビが正常に機能していなくて、異界に迷い込む話なんかも、自分も経験しており、その時の奇妙さと同じ空気を本から感じることができました。
ちなみにその時私ははお盆で長距離の運転をしていたのですが、行きも帰りも道路で狐の死骸(車にひかれた)を見ています。
行きと帰りで別の狐です。
この日は他にもちらほら怪奇現象がありましたね。
山犬の話なんかも載っていますが、若い頃に夜、山の麓で出会った三匹の野犬のことを思い出したり、自分の経験なんかと重ね合わせてりなんかして本当に色々と搔き立てられました。
それから、著者がテント泊中に鬼の手が突き破ってきて肩を掴まれ引きずり込まれそうになったという話をしていますが、私も似た経験があり、テントではないが室内の壁から白い手が伸びてきて足を掴まれ引きずり込まれそうになったことがあります。
その時は体の半分くらいは壁の中に入ってしまい、異世界に行ってしまう恐怖というものをいまだに覚えています。
その後の戻り方もほとんど同じで、すごく共感を覚えました。
こうやって書いてみると、著者の言う通り、人が経験した怪異を聞くと自分も思い出すものだなと実感する。
そして、ひどく頷いたのが、そういった奇妙なことを経験しても、封印してしまう人が多いという事。
例えば学生時代に、兄弟がすごい間近でUFOを見たといって興奮して走って帰ってきたのに、大人になってその時のことを聞いてみると全く覚えていなかったり、私と共に幽霊をみたり怪奇現象を経験した人が、その時のことをほとんど忘れていたりと(本人曰く恐怖過ぎて記憶から抹消しているんだと思うとのこと)、実際に起こったことを現実的ではないからと言って、話さないうちに記憶かなたに消し去ってしまったという人も結構いるんだと思います。
もちろん忘れてしまう人ばかりではなく、しっかりと覚えていて、私に話して聞かせてくれる人にも何人も会ったことがあります。
もう、この本は本当に素晴らしです。
科学的ではなく、著者が実際に足を運んで人から直接聞いた話をまとめているので、唯一無二なのです。