無知から始める読書習慣

読んだ本の感想と日々の変化記録

青空文庫〝桜の木の下には〟梶井基次郎  読書感想

 

夜暇だったので、何か小説を読みたいなと思い、kindleで探してみて見つけたのが「桜の木の下には」という小説です。

青空文庫なので0円で読めました。

桜の樹の下には

桜の樹の下には

 

 

最近は明治時代や昭和初期の作品を読むときは、読む前に作者のことを調べてから読むようにしています。

Wikipediaには生まれてから31歳で病気で亡くなるまでの人生が事細かに書かれているのですが、死んでからここまで細かなことまで世の人に知られてしまうのか、と私は少し恐ろしさを感じました。

 

 

しかも、その内容を読んでいて私が一番印象に残ったのは、

〝泥酔した基次郎が「俺に童貞を捨てさせろ」と大声で叫んだため、仲間たちが遊郭に連れていき、女がくるとゲロをわざと吐いて困らせたがその後は大人しく部屋に入っていった。

その後支払いのために時計を質に入れ、「純粋なものがわからなくなった」「堕落した」と仲間に言った〟

というエピソードです。

梶井基次郎 - Wikipedia

 

このエピソードが色んな意味で衝撃すぎて、悲しいことに一番印象に残ってしまった。

 

 

作者の風貌は、割とゴツゴツした感じの男らしい男といった感じで、「桜」がつく題名の作品を考えるようには見えないのですが、実際に小説を全部読んでみると内容は結構ダークです。

しかし、すぐに読み切れるくらいに短いものなので、あとに残らなくさっぱりとしている。

 

 

Wikipediaを読んでいて思ったのですが、繊細な心の持ち主なようで、その憂鬱な部分が「桜の木の下には」でも表れているのではないかと思います。

 

 

 

以下ネタバレ感想

 

 

 

 

 

桜の美しさを大絶賛する一方で、「桜の下には死体が埋まっている」と想像することによって、その神秘を感じるほどの美しさに対する不安を解消しようとしている。

 

桜はその腐乱した死体を木の根で包み込み、その体からでる水晶のような液を吸っているからこそあんなに輝いているのだという、桜にとってはとても迷惑な想像なのですが、これが梶井の心の均衡を保っている考え方だとしたら、とても滑稽でしかし人間の生々しいダークな部分がよく描写されているように思いました。