ゲノム解析について気になりはじめたので、読みやすそうなこちらの本を読んでみました。
ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来
- 作者:高橋 祥子
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2017/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
つい最近「バイオパンク」を読んだからか、女性が書いたものだからなのか、本自体読み慣れてきたのか、とても読みやすかったです。
著者は東京大学でゲノムの研究をし、その後事業として「ジーンクエスト」という会社を立ち上げ、ゲノム解析サービスを提供している女性です。
研究者というと堅苦しくて身なりの手入れも疎かになりがちなイメージがありましたが、そういったイメージはもうかなり古いもののようですね。
まず序盤で睡眠リズムが人によって違うということが研究でわかり、9万人のうち朝方が4万人、夜型が5万人とほぼ半分ずつになったということが書かれています。
夜型人間が意外に多くて驚きました。
今まで私の中では夜型自体あまりいいイメージがなかったのですが(不健康な感じ)、遺伝子でそう決まっていたとなると話は違ってきます。
私は幼いころから朝が苦手で夜になると頭が冴えてくる人間なのですが、そんな生活をずっと続けてはいるものの「ちゃんと朝早くに起きるようにしなきゃな」と自分を戒めながら長年生きてきました。
しかしこの文章を読んで、よくよく考えたら世の中の人全員が同じような時間帯に起きて同じような時間帯に寝なきゃいけないというのはおかしな話だということに気づきます。仮説として以下のことが書かれてあります。
集団生活で睡眠時間が重ならないような多様性を作ることで生き延びてきたのではないか
私はまだ遺伝子検査をしたことはないのですが、もし調べてみたら夜型に入るのかもしれない。
どうしても朝がダメで夜の方が調子のいい自分に引け目を感じながら生きてきましたが、もうその必要がなくなりそうです。
更に自分のことを不眠もちだと思っていたのですが、単純に自分に合う時間帯での睡眠を取れていなかっただけなのかもしれないですし・・・。
無理に朝起きてやる気が出てこないが夜になると冴える。
しかし早く寝なきゃ体に悪いと早めに布団に入るも寝れない・・・というサイクルを繰り返していました。
最近では「何時に起きても何時に寝ても罪悪感をもたないようにしよう」と思ってから昔に比べてかなり調子は良くなりました。
生命科学の成り立ちから、現在どういったことまで研究されているのかということまで書かれていてそちら方面のことはほぼ無知な自分にとってはとても勉強になりました。
そして、いろいろと解明していくためには、多くの人の遺伝子情報が必要だということがわかりました。
近年では国内外で遺伝子検査をする人がどんどん増えているそうですが、法則性を明らかにするためにはより多くの人の情報が必要になってくる。
読んでいてなるほどなと思ったと同時に、自分の遺伝情報は最大の個人情報であるので、セキュリティにも詳しくもなければ会ったこともない人の手元に自分の情報を差し出すということはちょっと怖くなりました。
私の祖先がどこを辿って今現在いる場所にたどり着いたのかということや病気の傾向など非常に気になるので、遺伝子検査は気になってはいたのですが、躊躇してしまうところです。
バイオパンクにも書かれていましたが、自分自身の全ゲノム情報を知る時代は近づいているということで、時代が進めば企業に頼まずとも自分で自分のゲノムを知ることができる時が近づいているのかもしれません。
がん、腸内フローラ、遺伝病などさまざまなことについて書かれていますが、その中でもなるほどなと思ったのが
生命データを解明することで大きな恩恵を受ける分野の一つは精神疾患ではないかと考える
という部分です。
今まで長らく考えていた精神病や発達障害などの診断についての疑問がここで晴れるとは思っていませんでした。
うつ病を始め、精神疾患の多くの診断は、医師が質問することぐらいしか手がない。
ほかの病気では血液検査や画像診断をして客観的に診断していることを考えると、かなり主観的だと思います。
最近何かと発達障害や精神疾患などついて目にすることが多くなりましたが、何かモヤッと感じるのは、その確証となるものが医師の問診以外では無かったらなのだとわかりました。
精神科医ががそうだと診断すればそうなってしまう事にかなりの違和感を感じていました。
精神医学について批判的になってしまいそうなところですが、その文章のあとに「現状では仕方のないこと」と付け加えているところがトゲトゲしてなくていいなと思いました。
お酒を飲めるかどうかが遺伝子検査でどうやってわかるのかといったことも書かれていて勉強になりました。
私は「お酒が苦手でも無理に飲む、飲ませる」ということがまかり通っていた世界で生きていたことがあります。
しかし遺伝子検査で飲める体質なのか飲めない体質なのかが予めわかっていれば、悲劇は起きないし、これからはより美味しくお酒が飲めるようになるではないかと思います。
ちなみに私は若いころに飲めないお酒を飲みまくって、連日二日酔いで体に鞭打っていましたが、お酒をやめてから数年後・・
病院で注射をしてもらう時にアルコール消毒をしてもらったところ、肌が赤くなったので「アルコールアレルギーがあるかもしれませんね」ということを看護師から伝えられたことがあります。
元から飲めない体質なのだとわかっていれば、色々な間違いは起こらなかったのかもしれない。
まだまだ内容は濃いですが、私が気になった部分を抜粋しました。
奥深く興味深い分野なので、これからも情報収集していこうと思います。